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「王妃には恩がある。嫌とは言えない。それに、忠告したはずだ。呪衣の力を借りても、王妃に叶えられる望みは高望み程度だと。現に櫂は二本しかなかった。第二望だ。高望み程度では届かない男になれと忠告しただろ。男爵が怠った結果だ」
「ッ……」
男爵の顔が歪む。
「さあ、守衛隊長がこんなところにいていいのか?」
「貴様が呼び出したんだろ!」
男爵は歯を剥き出し、荒々しい足取りで去っていく。
俺はその場を離れ、庭園の茂みを一つ抜け、城壁に沿って進む。
「そこの宮廷禍触師」
声を掛けられ、見上げると、城壁から一人の女が身を乗り出していた。
俺は城壁に付随する階段を上る。
女は若く、金髪であり、唇には真っ赤なルージュを引いていた。
ロングドレスの裾は長く、扇状に広がっている。
周囲には屈強な護衛が五人。
宮殿には様々な国の貴賓が滞在しており、この美女として世に知られた貴賓は山岳の帝国、リガルの女帝である。
「御用ですか?」
貴人の裾が長いのは、贅沢な布をふんだんに使える権威と財力を示すためか、日々の細々とした我儘を通すために呪衣を着ているかだ。
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