第1話

5/18
前へ
/61ページ
次へ
俺は後者に対するつもりで答える。 女帝がおもむろに紙片を差し出す。 「昼間、この様な手紙が来たから、どの様なものかと思って来てみたが、大して面白いものでもなかった」 匿名の手紙には、今夜、庭園の片隅に来る様にと書かれていた。 もし、今夜の件が女帝を通して王の耳にはいれば、王妃も俺もただでは済まない。 俺は手紙を丸め、懐に入れる。 「ミランダ様。この件、何卒、御内密に」 女帝が眉根を寄せる。 「私は不貞を好まない」 「では、この城の、とっておきの秘密を教えます」 「己の保身のために国を売るか?」 「聖剣スカルバゾスは、この城の地下に眠っています」 女帝の表情が変わり、周囲の騎士達も騒つく。 「何と?」 スカルバゾスは地に突き刺さっており、過去、幾人もの英雄が引き抜こうと試たが、成せず、次第に試みる者も無くなり、その存在も場所も伝説となりつつある聖剣である。 リガルは剣術に長けた国だ。 恐らく、ここにいる五人の衛兵だけで我が国の一個小隊に匹敵するだろう。 よって、剣に関する関心は非常に高い。
/61ページ

最初のコメントを投稿しよう!

27人が本棚に入れています
本棚に追加