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「良いだろう……案内せよ」
「はい」
「名は?」
「一級禍触師マティスです」
「一級……ならば、私の禍触師を呼ぶまでもないな」
「お役に立てるかと」
俺は先に立ち、城壁を下り、城に入る。
目指すは最下層。
地下へと続く階段は湿っぽく、黴臭い。
壁に据えられたロウソクが、壁に這うムカデを照らし出す。
陰鬱な靴音を響かせ、俺達は階段を下っていく。
護衛の騎士達も身の丈の倍はあるマントを引きずっているが、尚武の国だけあって裾を踏み付けて転ぶ様な間抜けはいなかった。
そして、俺は最下層のフロアに下り立ち、カシの木の大きな扉の前に立つ。
「この先でございます」
護衛の中から髭面の中年男が進み出て、俺に疑いの眼差しを向ける。
「俺は護衛隊長のベリングだ。まさか、俺達を罠に嵌めようなんてことないよな?一つ聞きたいんだが、なぜ、この国の騎士は近くにありながら聖剣を放置している?おかしくないか?」
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