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「聖剣が眠る部屋の前室には魔獣が巣食っています。この国の兵はどう頑張っても第二望まで、高望み程度で倒せる化物ではありません」
「ん、ああ、確かにそうかもな」
ベリングは素直に納得する。
我が国の兵は弱兵として有名であった。
「必要とされるのはこれだろう」
ベリングの背に黄金の舟のが現れる。
そこから伸びるのは三本の櫂。
第三望だ。
第ニ望が『高望み』なら、第三望は『狂おしいまでの渇望』だ。
よって、裾上の瘴気の密度も質も、第ニ望とでは格段に違う。
裾の上で少しでも対処を誤れば、即死も有り得る。
「一級禍触師なら、第三望に触れた事はあるだろ?」
「当然で御座います」
俺はベリングの裾を踏み込み、二歩先の背にある舟の刺繍を目指す。
大魔導師トゥリュスの戒めが、舟に触れさせまいとして俺を阻む。
裾の上に立ち込める瘴気を一言で例えるならば、悪意だ。
瘴気は粘度だけでなく、不意に質を変えて弾力を持ち、俺を弾き飛ばそうとする。
昔、第三望の裾から弾き飛ばされた禍触師を見た事があるが、壁に激突したその体は厚みが半分になっていた。
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