第1話

7/18
前へ
/61ページ
次へ
「聖剣が眠る部屋の前室には魔獣が巣食っています。この国の兵はどう頑張っても第二望まで、高望み程度で倒せる化物ではありません」 「ん、ああ、確かにそうかもな」 ベリングは素直に納得する。 我が国の兵は弱兵として有名であった。 「必要とされるのはこれだろう」 ベリングの背に黄金の舟のが現れる。 そこから伸びるのは三本の櫂。 第三望だ。 第ニ望が『高望み』なら、第三望は『狂おしいまでの渇望』だ。 よって、裾上の瘴気の密度も質も、第ニ望とでは格段に違う。 裾の上で少しでも対処を誤れば、即死も有り得る。 「一級禍触師なら、第三望に触れた事はあるだろ?」 「当然で御座います」 俺はベリングの裾を踏み込み、二歩先の背にある舟の刺繍を目指す。 大魔導師トゥリュスの戒めが、舟に触れさせまいとして俺を阻む。 裾の上に立ち込める瘴気を一言で例えるならば、悪意だ。 瘴気は粘度だけでなく、不意に質を変えて弾力を持ち、俺を弾き飛ばそうとする。 昔、第三望の裾から弾き飛ばされた禍触師を見た事があるが、壁に激突したその体は厚みが半分になっていた。
/61ページ

最初のコメントを投稿しよう!

27人が本棚に入れています
本棚に追加