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奥の松明が、鋭く太い爪を備えた二本の脚を照らし出す。
また、もう一方の松明が、闇からはみ出た二本の脚を照し出す。
「二匹か?」
「いえ、一匹のはずです」
「なに?」
つまり、あれが前脚で、あっちが後脚だ。
間にある闇の長さが、魔獣の体長である。
そして、闇に潜んでいた魔獣が飛び出す。
全身が毛に覆われ、突き出た鼻の下には牙が並び、狼に似たその化物はベリングへ覆い被さる様に飛び掛かる。
ベリングは重心を落とし、魔獣に向けて手をかざす。
「掌にすくえるだけの厄災」
ベリングの前に円形の障壁が現れ、魔獣を阻む。
障壁に弾かれた魔獣は四肢でレンガを砕き、床に降り立つ。
それと同時に背中の舟は消え、新たに三枚の花弁を持った花の刺繍が現れる。
彼が抱いた次なる第三望。
俺はすでに裾へ踏み込んでおり、黄金の花へ向けて手を伸ばす。
戦において、禍触師に安穏としている間は無い。
戦士が次の行動を起こす前に、戦士の妨げとならない様に、呪衣を発動させておかなければならないのだ。
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