第1話

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奥の松明が、鋭く太い爪を備えた二本の脚を照らし出す。 また、もう一方の松明が、闇からはみ出た二本の脚を照し出す。 「二匹か?」 「いえ、一匹のはずです」 「なに?」 つまり、あれが前脚で、あっちが後脚だ。 間にある闇の長さが、魔獣の体長である。 そして、闇に潜んでいた魔獣が飛び出す。 全身が毛に覆われ、突き出た鼻の下には牙が並び、狼に似たその化物はベリングへ覆い被さる様に飛び掛かる。 ベリングは重心を落とし、魔獣に向けて手をかざす。 「掌にすくえるだけの厄災」 ベリングの前に円形の障壁が現れ、魔獣を阻む。 障壁に弾かれた魔獣は四肢でレンガを砕き、床に降り立つ。 それと同時に背中の舟は消え、新たに三枚の花弁を持った花の刺繍が現れる。 彼が抱いた次なる第三望。 俺はすでに裾へ踏み込んでおり、黄金の花へ向けて手を伸ばす。 戦において、禍触師に安穏としている間は無い。 戦士が次の行動を起こす前に、戦士の妨げとならない様に、呪衣を発動させておかなければならないのだ。
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