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まさか、時仲くんが玲くんを殺そうとするとは予想外だった。
あの日、部屋に入っていく時仲くんを見てその表情がどこかぼんやりとしていた。
思い詰めたような、只ならぬ雰囲気に僕は直感的に危ないと感じる。
警察学校時代からの三年間で得た知識や経験が、僕に警鐘を鳴らしていた。
妙な胸騒ぎに、居ても立っても居られず僕は上司に適当に言い訳をする。
僕は玲くんの部屋に行き、扉の前で聞き耳を立てる。
中からくぐもった声が聞こえ、妙な胸騒ぎを覚え静かに扉を開ける。
目の前で玲くんに馬乗りになっている時仲くんを見つけ、慌てて引き剥がす。
喚き立てる時仲くんと、茫然自失している玲くん。
押さえ込んだ時仲くんを見下ろしつつ、上司になんて説明するかなと考える。
手錠をかける為にフォルダーに手をのばすと、震える声で玲くんに制止されてしまう。
僕は驚いて目を見開く。
やっと、邪魔者が居なくなるのと思ったのに……僕は心の中でため息を吐く。
でも、ここで玲くんの意思を尊重しないと、玲くんの心が壊れてしまいそうだった。
素直に従っておいた方が良いと、渋々ながら僕は時仲くんから離れる。
思い詰めて、罪悪感に侵されている玲くんに僕は優しく寄り添う。
玲くんはかなり狼狽していて、僕に八つ当たりをしてくる。
このまま、死んだほうが良かったと言われた時は、さすがに僕も素直に涙が溢れた。
君の為にここまでやってきたんだと、言葉が喉元まで出掛かった。
なんとか落ち着かせると、一旦は交番に戻る。
知り合いが、喧嘩をして助けを求めているので様子を見に行きたいと上司の了承を取る。
個人的なことは良くないが、今回だけ特別にと許可してもらった。
僕は一旦家に戻り、身支度すると時仲くんの家に向かった。
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