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 白い息が吐き出す度に、顔を突き抜け後ろに流れていく。季節はすっかり冬色に染まっていて、雪こそ降っていないが冷たい風が身に応える。  僕はコートの前を掻き集め、ついつい前傾姿勢で歩みを進めてしまう。  そもそも、レポートの提出期限を今日だと忘れていた僕が悪い。  バイトも休みで、午後には将希が来てしまう。まだ日が上がりきっていない午前中に、大学に行く以外方法は無かった。  さっさとレポートだけ渡すと、僕は早足でアパートまで戻って来たのだ。   自宅のアパートの道路を挟んだ向かいにある交番では、この寒い中表情崩すことなく、警察官が直立不動の姿勢を取っている。  僕は尊敬の念を抱きながらも、何もしてないのに畏怖を感じてしまう。まるで心の中の悪い事を全て見透かされているようで、ちらりと見ては目を伏せてしまう。  この交番は僕の住むアパートの正面を見渡せる場所にあるので、防犯面は完璧だ。  築二十年で1Kのリノベーション済み、四万五千円で警察官のセキュリティ付きなら安いものだろう。  最悪何かあっても助けを呼べば直ぐに来てくれるだろうし、前回の反省点も踏まえて僕も安心していた。  それでもやっぱり落ち着かないのは事実で、時々ここが自由がきく牢屋ではと思う時がある。  親にはこれ以上は迷惑をかけられないこともあり、文句は言えなかった。  警察の威圧感以外は、至って平和なアパートなので僕も何とか快適に過ごせていた。
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