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突然、スマホが鳴り僕は現実に戻された。
良いところを邪魔された僕は、苛立ちつつ体を起こす。 テーブルに置かれたスマホの画面を見て、思わず心臓が跳ね上がる。
着信は将希からで、僕は驚いて出るのを躊躇してしまう。
恐る恐る電話に出ると『玲か?』と、久しぶりに聴く将希の声に、今までの甘い気分が萎んでしまう。
「どうしたの?」
動揺を悟られないように短く返す。
『いや、ちょっと話したいことがあって』
なんだか深刻な声音に、僕はスマホを強く握りなおす。
『お前、今一人か?』
「ううん。違う」
『稔さんと一緒か?』
図星を突かれ、僕は言葉に詰まる。
『そっちに行っても大丈夫か?』
僕はちらりと、後ろを振り返り目を見開く。稔さんの顔色が真っ青で、壁にもたれ掛かっていた。
「ちょ、ちょっと待ってて。かけ直す」
そう言い残し、僕は慌てて通話を切る。
「稔さん。どうしたんですか」
僕は慌てて、稔さんに近づく。
「ううん。ごめんね。大丈夫」
稔さんは弱々しく口角をあげる。どう考えても大丈夫そうな顔ではない。
「将希には、今日はやめてくれるように伝えますね」
僕が電話をしようとスマホに視線を向けると、稔さんが優しく僕の手を掴む。
「いいんだ。呼んでくれないか」
稔さんの表情が少し苦しげだ。僕はどうするべきか思い悩む。
「いずれはバレてしまうことだから」
なんのことだろうか。冷や汗が背中を流れ、スマホを握る手が汗ばむ。
「何がですか?」
緊張感で語尾が僅かに、震えてしまう。
「彼が来たら説明する」
それっきり、稔さんは黙り込んでしまった。
僕は落ち着かない気持ちのまま、将希に来るように連絡をする。
稔さんはその様子を、ぼんやりした目で見つめていた。
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