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翌日、昼過ぎに家を出ると、僕は電車に乗って将希の家に向かった。
稔さんが出ていった後、僕はベットの上でただぼんやりと天井を見つめていた。
思考を巡らせても、答えは出てこず気づけば朝を迎えていた。
将希の家は一軒家で外観も立派だ。西洋風な白い壁作りで、二階には広いバルコニーが付いている。玄関に続く、広い庭には低木が植えられていた。広めの玄関口にある、インターホンを鳴らすと将希が顔を出した。
「昨日はごめん‥‥‥」
閉口一番に僕は謝った。
「気にするな。そんな事より、おまえ顔色が悪いぞ」
将希が僕を家に入れると、玄関を締めて鍵をかける。昨日とは打って変わって、いつもどおりの将希で安堵する。
「両親とも仕事でいないし、気を使わなくていいから。先に上がってて」
久々に入った将希の家は、記憶通りに綺麗に整理されてお洒落だった。
広い玄関を抜けて、僕は先に階段を上がり将希の部屋に行く。
相変わらずシンプルで、棚には趣味のカメラや写真集が並べられていた。後は勉強机と丸テーブルにベッドと、至って普通の部屋だ。
額に入れられ壁に飾られた一枚の写真に目が止まる。この白い花の写真は将希が撮ったものだろうか。一つ一つの花が星型で、短い触手が出ている。まるで、白い線香花火のようで可愛らしい。
ぼんやりと写真を見ていると、将希がカップを二つ持って部屋に戻ってくる。
僕が写真を気にしているのが分かったのか「ああ、それね」と将希がテーブルにカップを置きつつ、切り出した。
「綺麗だろ。ガマズミっていう樹木なんだ」
将希が僕の隣に並び、写真を見る。将希は、何だか慈しむような優しい表情をしていた。
「赤い実が付くんだけど、食べれるんだよ」
「へぇー、何処で撮ったの?」
「高校の校舎裏。写真部の課題で、校庭にある花を被写体に撮るっていうのがあってさ」
そこで将希が複雑そうな顔をする。
「この花なんだけど、花言葉が私を無視しないでって意味があるんだ」
僕はなんだか嫌な気持ちが湧き上がる。
「まぁ、実際は怖い意味じゃなくて、花が咲いてから赤い実が付くまで目が離せないのが、由来してるんだけどね」
僕は少しホッとする。それなのに、将希は浮かない顔をしたままだ。
「別の意味もあってね。愛は死より強し‥‥‥」
再び僕は青ざめてしまう。よりによって、将希はなんて話を聞かせるんだ。
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