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「それなら僕より二歳年上ですね」 「そうだね。大学二年生ていうと、二十歳ぐらいだもんね。もっと若く見えるから未成年かと思ったよ」  それはよく言われる。タバコも吸わないし、お酒も弱いので買う場面はあまりない。その点は心配ないけど、童顔なせいか大学に入ってからは女子からモテなくなった。  高校の頃はそれなりに、女子ともお付き合いした。  けれど、何故か男子にも告白される事があり、断ると逆上される事もあった。  そんな時に助けてくれたのが、親友の時仲(ときなか) 将希(まさき)だった。  そういえば、将希と会う約束してたんだっけなと呑気に考えていると「手が止まってるよ」と稔さんが僕の顔を覗き込む。  思わずドキッとしてしまう。爽やかな美男子の顔が近くにあるなんて、男の自分でも心臓に悪い。 「あっ、すみません」  そう言って、僕は慌てて書類を記載していく。 「玲くんとは仲良くなれそうだな。本当は職業柄こんなこと口説くなんて、上司に殺されそうだけど」  僕の下心を知ってか知らずか、稔さんからそんなことを言ってくれる。これは絶好のチャンスだ。 「僕もそう思ってました! 是非、連絡先交換しましょう」  スマホを取り出して、期待に満ちた目で稔さんを見つめる。少しがっつき過ぎたのか稔さんが苦笑しつつ、スマホを取り出してくれた。  無事に連絡先を交換し、また改めて連絡するねと微笑むと稔さんは部屋を後にした。  僕は馬鹿みたいに浮かれ、将希に自慢しようと稔さんの連絡先を見つめる。  そこにタイミングよく、将希から今からそっちに行ってもいいかと連絡が入る。  なんと素晴らしいタイミングなんだと、僕は直ぐに承諾の返事をした。
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