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講堂へと続く道は、今年も満開の桜が咲き乱れていた。鼻先を掠める花びら達が、新たな門出を祝福しているように思える。
大学の講義も再開し、僕は晴れて三年生を迎えることが出来た。
相変わらず、稔さんはストーカー癖は健在だ。
僕は講義が再開したことで、バイトを夕方に戻した。それに釣られるように、稔さんも夕方に顔を出すようになる。
由梨ちゃんが目ざとく見つけると「あっ、イケメン警察官が来た!」と興奮気味に僕の袖を引く。
やっぱり由梨ちゃんが言っていた人は、稔さんだったのだと僕は呆れてしまった。
今では愛しい恋人だけど、やっぱり異常だとは思ってしまう。
将希とは何度か連絡を取り合い、顔を合わせていた。それでも、どこか余所余所しく感じてしまう。
昔に比べて、会う回数も格段に減っていた。
それに加えて、大学が始まった事で、余計にお互い会えなくなるだろう。
寂しい気持ちもあったけど、罪悪感があった僕は内心ホッとしていた。
将希が僕を好きだとは気づかず、僕は甘えてばかりいたのだ。
都合良く利用していたのだと思うと、胸がチクリと痛む。
将希に限らず、大学とバイトで忙しくなり、稔さんともちゃんと会うことも減ってきた。
顔を見ることは出来ても、面と向かって話す機会が少ない。電話やメールは毎日くるけど……。
そんな日々が、幾日か過ぎた頃、稔さんがうちに来ないかと誘ってきた。
今までは、僕の家で会うことが多かったこともあって、稔さんの家は初めてだ。
緊張と興奮で、ついつい口元がにやけてしまう。
大学の友達に「なんか良いことでもあったのか?」と何度も聞かれてしまう。
さすがに本当の事は言えないので、適当に受け流す。
当日は僕のバイトが休みで、大学の講義が終わってから、大学前で待ち合わせすることに決まった。
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