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玲くんが鍵を落としたことで、僕たちの距離は一気に縮まった。
相変わらず、警戒心が薄くお人好しな玲くんに呆れはするものの、それが逆に利点として僕の作用する。
とにかく、優しく頼りがいがあるというアピールに加えて、お酒の弱いのを知りつつも飲ませる。
ついでに、少々薬を缶の口に塗っておいた。お酒だけで、あんなにも乱れることはそうそうない。
本人の許可なく、薬を使うのは犯罪だ。だからと言って、僕はそんなことどうでもいい。
警察官という職業だからといって、正義感なんか持ち合わせていない。
僕は玲くんの為に警察官になっただけに過ぎない。
好きだと言わせたのも、玲くんに自覚を持たせるためだ。
例えそんなに好きじゃなかったとしても、口に出して肌を重ねればそうなのかもと思ってしまうだろう。
案の定、朝には恥ずかしくも幸せそうな顔で僕を見つめてきた。
タイミングを見計らったような、時仲くんの着信は内心苛立っていた。
玲くんと時仲くんの会話から、ああ、バレたのかと他人事のように思えた。
バレることは、想定済みだった。だからこそ、早急に行動を移していたのだ。
時仲くんの前で、僕はしおらしくする。内心は苛立っていたが、おくびにも出さないようにした。
玲くんのお人好しぶりなら、簡単には離れていかないと踏んでいて、いつも通りいい人の仮面をかぶる。
それに、時仲くんも内心焦っているだろう。
僕が三年半離れていたのに、こんなにも玲くんと親しい中になっているのだ。
俯いて落ち込んでいる風を装い、内心は笑みを噛み殺す。
――時仲くん。遅かったね。
時仲くんの絶望的な顔が、僕は堪らなく愉快だった。
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