第一話 足の力と目の力

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第一話 足の力と目の力

手前に来客用のソファとガラスのテーブル、奥に茶色の無機質なデスク。 そこに座る女性。 あれが澪凪羽多(みおなぎうた)隊長。 女性の戦闘員は珍しかった。体は細く、幾度と戦場を駆け回ってきたとは思わせないほどの白い肌を袖から覗かせていた。 しかし、戦闘に関してはかなり優秀である。事務室には様々な表彰状や盾が飾られている。 羽多は時計を一瞥して、 「遅いな」 僕が口を開こうとする前に、 「まぁいい。それよりリバルが出た。場所はここヴァリアル基地から北に十二分の交差点だ。既に他の基地から数人派遣されている。すぐに向かえ」 機械的に言葉を発したその声は透き通っている。聞き慣れた声だ。 「お前ら二人で十分だろう」 それだけを聞いて二人は事務室を出た。 交差点に着くとまず煙の臭い。 遅れて火を上げて横転する車を発見。 道路に散乱する瓦礫を発見。 建物にかなりの損壊を発見。 見たところ、怪我人はいない。 もしくは、既に運び出されたか。 既に他の基地の戦闘員が手に武器を持ち応戦している。 まず状況を確認して、僕は思ったことを述べる。 「今回は出番無しかな」 「俺も今それ思った。リバルは粗方片付いてそろそろ決着がつきそうだ。下手に参戦して他の隊員を混乱させるのは賢くない。怪我人が他にいないか探そう」 と、そこで、僕は違和感に気付く。 僕ら後方、霜も気付いたみたいだ。 黒い点が三つこちらに向かってくる。 「僕らが怪我人になっちゃもっと迷惑だね」 「あぁ、走るぞ」
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