第一話 足の力と目の力

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このまま着地をすると足が折れる、そう判断した僕は着地と共に膝を曲げ、お尻で地面を受けて右に転がった。 …のだが、右の膝に衝撃が残ってしまったようだ。 「うっ!」 立ち上がる時に激痛が走った。 「はぁ、この足も万能じゃないな」 ドローンは薄く煙を上げて横たわっている。 プロペラは縦に二つ、下部両側に短機関銃を搭載していた。ドローンの本体には金色の文字で「JYAERO DAIEN」と書かれていた。 時は少し遡り、霜は走りながらため息をついた。 「はぁ、何で俺の方に二機も来るかねえ…」 車二台分の広さの通りを走る。 さっきから俺の横の壁や道路が花火大会のようだ。 このままじゃ確実に追い付かれる。 「俺、頑張んの苦手なんだよなぁ」 一瞬だけ後ろを見てみる。 しかし、それで全てが分かる。 一機は大きなドローンでプロペラは四方に四つ、バレルの少し短いライフルを搭載、十パーセントほど。 もう一機は小型のドローンでプロペラは横に二つ、小さなショットガンを搭載、こちらも十パーセントほど。 「まぁ、他の奴等も頑張ってたし、なんせ、死にたくないし」 そして、立ち止まって振り向く。その間に二機のドローンは数メートル近付いてくる。 俺はドローンに向かって走る。 ドローンの下をくぐるように跳んだ。 「間に合え!」 銃弾がかかとをかする。 前回り受け身をとって振り返り、腰に装備していた拳銃を二丁、発砲。 小型ドローンのプロペラに当たり、バランスを崩し墜落する。 大型がライフルを発砲してきた。 霜はその弾丸を見つめる。 常人には見切れない速さだか、霜にはそれが見える。 弾丸の数や弾道、回転まで全てを見ることができる。 左手の拳銃をドローンに向け、身体を右に九十度。胸に飛んできた弾丸をかわし、引き金を引こうとした時、ライフルの銃口から弾丸が顔を出すのが見えた。 「ちっ、くそ」 間に合わない。 右足で地面を蹴り、横に跳び弾道から外れる。 そして、両手の拳銃でプロペラを撃った。 「ぐあっ」 弾丸を見届ける前に俺が先に肩から地面に倒れた。 遅れて聞こえてきたドローンが地面に叩きつけられる音を聞いて安堵のため息をついた。
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