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「うわっ!何、美里?」
「何ボーッとしてんの、どこが痛むのって聞いてんの!」
本当に僕を飲み込まんとしているようだ。
「誠は愛しの美里ちゅわんに見とれてやがんの」
霜があまりに図星な事を言うもんだから、僕は何も答えられない。痛む所を言わせてくれない。
「なっ…!何言ってんのよ!!変態っ」
何故、僕の顔面をビンタするのかが分からなかった。
「言ったのは霜だよ。かかとと右膝が痛むから治療お願い」
取り敢えず、言いたいことを全て言う。
「後は、美里ちゅわんに焦がされた僕のハートさ」
これは、ノリに乗っただけだ。僕だってノリは良い方だ。
だけど、二回目のビンタは確実に僕が悪い。
「ふむ、二人でドローン三機か。Xマンには出会わなかったか?」
Xマンとは二足歩行で移動する対人戦闘機の事だ。いわゆる人型ロボットのような。
「はい、俺らはドローンだけでした」
霜が答える。
「何か変わったことなどは無かったか?」
羽多隊長の声はいつも冷たい感じの調子だが、今回はさらに冷たくヒヤリとさせた。
「何かあったんすか」
霜が僕の気持ちを代弁してくれた。
僕は唾を飲み込む。
「実は、他の基地の戦闘員が戦ったドローンにサイレンサーを装備していた機体があった」
誠も霜ももちろんサイレンサーは知っていた。
サイレンサーとは銃声を抑えた銃のことだ。
通常、銃弾を発砲した時に発射薬の燃焼ガスが銃口から噴出し銃声が鳴る。
そして次に、弾丸は音速以上の速度で飛翔し衝撃波による轟音を響かせるのだが、バレルにサプレッサーを取り付けることで発砲時の銃声を抑制し、弾丸を亜音速で飛ばすことで轟音を抑えるのだ。
つまり、どこから射撃されたか、方向を特定しづらい陰気な兵器だ。
「けっこうな数をやられ、手間取ったそうだ」
羽多隊長は神妙な面持ちで言う。
今までに無いスタイルのドローンだった。
それはつまり、
「相手が進化してきているってことですか」
一刻も早く対応しなければならない。
「そうだ、遂に動き出した、頭のイカれた技師が集まるジャンクランドが」
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