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「わあ! しゅごい!」 四歳になる息子のマツユキが、まるでヤモリかなんかのように窓ガラスにへばりついて、庭先に舞い落ちていく雪を、一片も見逃すまいとでもいうように夢中になって眺めている。  昨日から降り始めた雪は、テレビの報道によると三年ぶりらしく、眼鏡をかけた若いリポーターが路上に積もり始めた雪に人差し指を突き刺し、現在の積雪量と明日のおよその積雪量とを、寒さに耐えながら必死の形相で報じている。  そう言われれば確かにここ数年は降っていなかったような気もするが、豪雪地帯でもないこの街では雪に関しての関心も薄い分、そんなこともすっかり忘れてしまっていた。
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