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あの大きな橋を越えて、いくら歩いただろう。
人の居ない公園を抜けて、自転車の通り過ぎる国道脇を行って。
瞼の腫れはひいただろうか。
目をこする。指先が冷たい。
寒気に赤くなった頬で白い息を吐く。
上着らしいものも羽織らずに飛び出してきた。
あの家に来てから初めてのことだ。
ただただ寒風の中を、あても無く、今居る場所も分からず、薄い部屋着のまま街の端を歩いた。
擦れ違う人が偶に振り返る。ような気がする。
振り返ってみても誰の姿も無く、またふわふわと歩き出す。
どこへかは分からないし、考えることも無かった。
軽い思考に反して、体は重かった。
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