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あれから、どれくらい経っているのだろう。
誰にも会わなかった。
俯いた顔では、街に表示されている「今」も目に入らない。
雪の積もった地面と、少しのぞく草と、冬の薄い陽の光と。
見えるのはそれだけ。
歩き続け、いくつめかのこの公園で、乾いたベンチを見つけ、腰をおろした。
細く息を吐いてうつむく。
薄い木立の向こうには、車も人も行き交っていたが、ここは静かだ。
周りの音は耳に入らず、伏せた目は何も映さなかった。
ただ平坦になっていく心の遠くに、大変な忘れ物をしたような気持ちだけが、わだかまっていた。
****
日が傾き、沈んでしまっても、2人は黙って座っていた。
その、少し空いた間には、妙な沈黙が居座っていた。
話し掛けるタイミングを逃したような、見てみぬふりをするような。
落ち着かない空気のまま、互いにじっとしている。
外灯に照らされ、時折、黒コートが公園の時計を見上げる。
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