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やがて、雪が降りはじめた。
それはすぐに、髪や肩に白く乗り、ゆっくりと消えていく。
足元が白くなる頃、背けられていた顔が、ふっと俯いた。
その鼻先や頬が赤く、固く組んだ指も色が悪いのに気付き、彼女は羽織っていたコートを頭から被せた。
「馬ッ鹿」
寒いなら早く言え、と続く言葉が止まる。
コートの下から、次々と雫が落ちている。
少し驚いたが、何やってんだも仕方無えも飲み込んで、震える肩をぐいと抱き寄せた。
「――っ! 何……でっ」
ひきつった声の割には抵抗されない。
続く、嗚咽まじりの声に生返事をし、ゆっくりと肩を叩く。
それでまた泣くものだから、何も言えない。
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