夜は静かに

5/13
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
   やがて、雪が降りはじめた。  それはすぐに、髪や肩に白く乗り、ゆっくりと消えていく。  足元が白くなる頃、背けられていた顔が、ふっと俯いた。  その鼻先や頬が赤く、固く組んだ指も色が悪いのに気付き、彼女は羽織っていたコートを頭から被せた。 「馬ッ鹿」  寒いなら早く言え、と続く言葉が止まる。  コートの下から、次々と雫が落ちている。  少し驚いたが、何やってんだも仕方無えも飲み込んで、震える肩をぐいと抱き寄せた。 「――っ! 何……でっ」  ひきつった声の割には抵抗されない。  続く、嗚咽まじりの声に生返事をし、ゆっくりと肩を叩く。  それでまた泣くものだから、何も言えない。  
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!