夜は静かに

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   渡されたタオルで顔を拭い、大きく息を吐く。  すっきりした。  それから疲れた。  ぼんやりと、呼気で暖まったタオルに口元を埋めていると、セーター姿の彼女がじっと見ていた。  気付いた瞬間、にやあっと笑われ、戸惑うと同時に、かっと頬が熱くなる。 「な、何です?」 「いやァ今のお前、女子だったら惚れるかもなーって」 「どういう意味ですか」 「色気まんてんっつーハナシ」  けけ、と笑う様子に、いつものようにからかわれたと、やっと気が付く。 「――知りません」  ぷいと歩き出す。 「あ、オイちょっと待てって! こっちは上着無ェんだよ!寒ィ!」  ばたばた追いかけてくるのか面白くて、見えないように笑いながらしばらくそのまま走った。  
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