4人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ
オープンテラスのカフェでコーヒーを飲みながらマチルダは行き交う人々を眺めていた。
普段は館に閉じ籠り外出をしないマチルダが、街中のカフェに居るのは懐かしい友に会うためだった。
そう、二人っきりの魔女集会。
もう何年、いや何百年と続いてきた行事と言うか腐れ縁の久し振りの近況報告だ。
「前に、人間の子供を拾ったって連絡来て以来だから十年、ううん二十年ぶりに連絡来たんだっけ」
遥か昔、まだ神魔が覇権を争っていた頃からの腐れ縁。
二人の色香に惑わされた権力者が、二人を捕らえようと軍隊を動かした事もあった。
そして唯一、マチルダの初恋を知る女性。
世間では死んだ事になっているその魔女は、今は名を変え姿を変え気ままに暮らして居る。
「少し遅れたかしら。お待たせ」
「時間にルーズなのは相変わらずね。でも昼間に待ち合わせだなんて、まさか禁酒したとか?」
「いや、前に拾った子がいるって言ったでしょ?だから、あまり時間取れなくて」
そう言う彼女は幸せいっぱいだと言わんばかりの笑みを浮かべていた。
「まあ…うん。元気そうだね」
「そうなの。あの子がね、大きくなって私もそろそろ母親役終わりかなと思ったら、うふふ」
彼女は左手をヒラヒラさせマチルダに見せた。
「ちょ!まさか、その子と」
「そっ、普段は押し倒す側の私が押し倒されちゃった」
にこやかに話す彼女に、マチルダは残っていたコーヒーを全部飲み干し気を落ち着かせた。
最初のコメントを投稿しよう!