新しい朝

2/2
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
今日は特別な日だ。 朝日が眩しい。 空気がおいしい。 水が冷たい。 新しいタオルの肌触りがいい。 洗いたてのシャツが心地良い。 靴下に穴が開いていない。 髪を整えようと鏡の中を見入ったとき、 なにも映っていないことに気がついた。 通り抜けることさえできる。 太陽は、こんなにも暖かい光を放っていたのか。 空は、こんなにも青く澄んで、広がっていたのか。 大手を振って、堂々と、顔を上に向けて歩くことさえできる。 曲がり角を気にせず、猛スピードで走り抜けて、飛び回って、スキップして。 ジョンに吠えられることなく、浦野さんも振り向かない。 こんな清々しいキモチ、何年ぶりだろう。 ウレシイなみだ、初めてではないだろうか。 軽く汗ばむ身体を感じるのは、置いて来た躯の仕業か。 大声で叫んでみようとして、止めておいた。 完全なる自由を手に入れた、特別な日だから。
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!