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今日は特別な日だ。
朝日が眩しい。
空気がおいしい。
水が冷たい。
新しいタオルの肌触りがいい。
洗いたてのシャツが心地良い。
靴下に穴が開いていない。
髪を整えようと鏡の中を見入ったとき、
なにも映っていないことに気がついた。
通り抜けることさえできる。
太陽は、こんなにも暖かい光を放っていたのか。
空は、こんなにも青く澄んで、広がっていたのか。
大手を振って、堂々と、顔を上に向けて歩くことさえできる。
曲がり角を気にせず、猛スピードで走り抜けて、飛び回って、スキップして。
ジョンに吠えられることなく、浦野さんも振り向かない。
こんな清々しいキモチ、何年ぶりだろう。
ウレシイなみだ、初めてではないだろうか。
軽く汗ばむ身体を感じるのは、置いて来た躯の仕業か。
大声で叫んでみようとして、止めておいた。
完全なる自由を手に入れた、特別な日だから。
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