Chapter.1

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「アンタって相変わらずバカね、 ホントにバカ!」 言葉とは裏腹に楽しそうな口調で千尋は言う。 そしてご機嫌な足取りで カバンを拾い上げると そのまま自宅のドアを開ける。 ドアが閉まる音で勇気は我に返った。 気づけば、空は真っ暗になっていて 雪は更に降り注いできている。 もはや雪かきをする意味はない。 勇気は帰宅しようとして ふと立ち止まる。 そして暫く躊躇した後、きびすを返した。 ……………………………………………………… 外から帰ると 家は暖かな空気で迎えてくれた。 千尋は靴を脱ぎ、そのかかとを揃えて置く。 “白金女学院”で植え付けられた“習慣”だ。 あの女学院はこの様な“習慣”を幾つも設けている。 千尋はリビングへ向かう。 「ただいま~」 「おかえり、あら、貴方…」 「話しは後! 寒いからお風呂入ってくる」 風呂から出て千尋はやっと一息ついた。 髪を拭きながら鏡を見ていてふと気づく。 “しまった、メガネ!” あの馬鹿に吹っ飛ばされたので 赤い眼鏡はおそらく雪の中だ。 脱衣所から出ると母親にまた声を掛けられる。 「あら、どうしたの?」 「忘れ物しちゃったから ちょっとだけ出て来る!」 「髪濡らしたままだと風邪引くわよ!」 母の言葉を無視して、千尋はドアを開ける。
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