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「アンタって相変わらずバカね、
ホントにバカ!」
言葉とは裏腹に楽しそうな口調で千尋は言う。
そしてご機嫌な足取りで
カバンを拾い上げると
そのまま自宅のドアを開ける。
ドアが閉まる音で勇気は我に返った。
気づけば、空は真っ暗になっていて
雪は更に降り注いできている。
もはや雪かきをする意味はない。
勇気は帰宅しようとして
ふと立ち止まる。
そして暫く躊躇した後、きびすを返した。
………………………………………………………
外から帰ると
家は暖かな空気で迎えてくれた。
千尋は靴を脱ぎ、そのかかとを揃えて置く。
“白金女学院”で植え付けられた“習慣”だ。
あの女学院はこの様な“習慣”を幾つも設けている。
千尋はリビングへ向かう。
「ただいま~」
「おかえり、あら、貴方…」
「話しは後!
寒いからお風呂入ってくる」
風呂から出て千尋はやっと一息ついた。
髪を拭きながら鏡を見ていてふと気づく。
“しまった、メガネ!”
あの馬鹿に吹っ飛ばされたので
赤い眼鏡はおそらく雪の中だ。
脱衣所から出ると母親にまた声を掛けられる。
「あら、どうしたの?」
「忘れ物しちゃったから
ちょっとだけ出て来る!」
「髪濡らしたままだと風邪引くわよ!」
母の言葉を無視して、千尋はドアを開ける。
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