Chapter.1

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【01】  寒い日は憂鬱だ。 水嶋勇気[みずしま ゆうき]は 天気予報を見ながらうんざりした気分になる。 明日は夕方から雪が降るという。 現に今の気温は氷点下だ。 幼い頃は雪が降ると良く雪合戦をしたものだが 高校生になってからはご無沙汰だ。 ソファにだらしなく寝転がっていると キッチンから 母が手を拭きながら出て来る。 「勇気、悪いけど回覧板届けてくれる?」 「え、外寒いじゃん…」 「夕飯抜きにして欲しいの?」  そう言われたら子供は親に勝てない。 「どこに持ってくんだよ?」 「お隣の雪城[ゆきじょう]さん。 千尋[ちひろ]ちゃんのお家よ」 雪城千尋[ゆきじょう ちひろ]。 幼稚園の頃から付き合いのある幼馴染だ。 …訂正しよう、付き合いの“あった”幼馴染だ。 彼女とは小学生の頃、良く一緒に遊んだ。 ショートの髪を揺らしながら はしゃぐ千尋との仲はずっと続くと思っていた。 しかし成績の良かった千尋は中学受験をし 近所でもお嬢様学校と名高い “白金女学院”に合格する。 一方の勇気は自動的に 地元の公立中学へ入学した。 いま思えば 二人のすれ違いはココから始まっていたのだ。
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