Chapter.1

3/12
前へ
/12ページ
次へ
会わなくなった間に 白金女学院は千尋を変えてしまった。 短かった髪を腰まで伸ばし、 受験勉強によって落とした視力を 赤い縁のメガネで補っている。 勇気と会っても挨拶一つ交わさない。 二人はもはや他人だった。 勇気は仕方なく家を出て真隣の家へ向かう。 直線距離にしてほんの1メートル。 それでも心理的には遠く感じた。 インターフォンを鳴らすと ドアの鍵をイジる音が聞こえる。 おばさんが出ると 油断していた勇気は思わず目を見開く。 千尋。 「…何の用?」 「…回覧板だよ。母さんが届けて来いってさ」 「ふぅん」 千尋は怪訝な顔で“お届け物”を受け取り そのまま扉を閉じようとする。 「待てよ。礼一つナシか?」 「なに?感謝されたいから来たの?」 「別にそうじゃねえけどさ」 「なら、イイじゃない。さよなら」 なおもドアを閉じようとする。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加