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いま手元に火炎放射器があれば
どれ程ラクになるか
余計な事を考えていると
シャベルが雪の塊に引っかかり
その反動を受け、勇気は足を滑らせる。
そして後ろへ倒れ、
頭を地面に思いっきり打った。
眼の前をチカチカと星が舞っている。
「痛[いって]え…」
勇気はだんだんと腹が立ってきた。
人の為にわざわざ動いているのに
どうして痛い目に遭わなければならないのか。
もし本当に神が居るのなら
今の自分ほど
祝福するべき人間は居ないはずだ。
八つ当たりは天界にまで及んだ。
見ると
勇気の手にも雪が載っている。
そうなのだ、
全ては雪のせいなのだ。
「クッソぉ!!」
勇気は手元の雪を集め
上に向けて思い切り投げる。
もちろんそれが空に届くわけもなく
途中で放物線を描いた。
徒労感にため息をついていると
不意に「キャッ」という短い悲鳴が聞こえた。
その高い声には覚えがある。
勇気が慌てて仰向けから起き上がると
思わず目を思い切り見開く。
「ち、千尋…!?」
先ほどの雪は千尋の頭に命中した様だ。
街頭の元、
綺麗な黒い髪に雪がこびりついている。
千尋の肩は震えていた。
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