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「もしかして目に当たったのか…?」
相変わらず返事は無い。
まさか、目にケガさせてしまったのでは…
勇気は不安にかられる。
「あ…」
だしぬけに千尋が勇気の後方を指差した。
振り返るが、
別段変わったものは見当たらない。
「千尋…?」
「違う、足元」
勇気はしゃがみ込んで目を凝らす。
足元はただただ白いだけだ。
「おい、何があ…」
「喰らえ――ッ!!!!」
千尋の叫び声と共に背中が著しく冷たくなる。
制服と背中の隙間に
両手いっぱいの雪を突っ込まれたのだ。
「おまっ、冷てえじゃねえか!」
「私に二度も雪をぶつけてくれた罰よ!」
「バカ野郎、風邪引くだろうが!
うわあぁ~、冷てえぇ~!」
勇気は必死に背中から雪を出そうとする。
Yシャツをズボンから引っ張り出し
必死に背中から雪を掻き出す。
我ながら格好良いとは言い難い姿だ。
「…プッ」
後ろから噴き出す音が聞こえた。
見ると、
千尋は身体を曲げながら身体を震わせている。
「千尋…?」
「プッ…クッ…アハハハハハッ」
彼女はコチラを指さしながら
大笑いし始めた。
勇気は呆気にとられている。
彼女の目には
笑い過ぎたせいで涙が浮かんでいる。
その姿は 、勇気の知る昔の千尋と重なった。
赤い眼鏡を掛けていないからかもしれない。
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