Chapter.1

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「もしかして目に当たったのか…?」 相変わらず返事は無い。 まさか、目にケガさせてしまったのでは… 勇気は不安にかられる。 「あ…」 だしぬけに千尋が勇気の後方を指差した。 振り返るが、 別段変わったものは見当たらない。 「千尋…?」 「違う、足元」 勇気はしゃがみ込んで目を凝らす。 足元はただただ白いだけだ。 「おい、何があ…」 「喰らえ――ッ!!!!」 千尋の叫び声と共に背中が著しく冷たくなる。 制服と背中の隙間に 両手いっぱいの雪を突っ込まれたのだ。 「おまっ、冷てえじゃねえか!」 「私に二度も雪をぶつけてくれた罰よ!」 「バカ野郎、風邪引くだろうが! うわあぁ~、冷てえぇ~!」 勇気は必死に背中から雪を出そうとする。 Yシャツをズボンから引っ張り出し 必死に背中から雪を掻き出す。 我ながら格好良いとは言い難い姿だ。 「…プッ」 後ろから噴き出す音が聞こえた。 見ると、 千尋は身体を曲げながら身体を震わせている。 「千尋…?」 「プッ…クッ…アハハハハハッ」 彼女はコチラを指さしながら 大笑いし始めた。 勇気は呆気にとられている。 彼女の目には 笑い過ぎたせいで涙が浮かんでいる。 その姿は 、勇気の知る昔の千尋と重なった。 赤い眼鏡を掛けていないからかもしれない。
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