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・・・。うん、・・ここは。
四畳半ほどの部屋。ベッドの上に横たわる自分の体が目に入る。
夢か・・・。こんなに長く夢を見ていたのだろうか。
アデリーペンギンだった自分、そしてエブリスタで出会った多くの仲間たち。
全ては走馬燈のように脳裏に流れる。
私のそばには、ザラゾーもいない。
「なんだ。結局、夢落ちか・・・。作者の想像力も枯渇気味だね。」
私は苦笑いを浮かべて、ベッドから起き出すと、小窓から外を眺めた。
外は真っ暗闇だった。
それもそのはず、ここは南極。西オングル島の片隅にある昭和基地だ。
そして今は極夜と呼ばれる一日に一度も日が昇ることない季節である。
私は、ぼんやりと窓の外に広がる満天の星空を眺める。
その一つ一つの輝きは、まるで生きとし生けるものすべてを包み込み祝福する
拍手のようだった。
私は分厚い防寒服を着こむと、居住棟の入口扉から外に出た。
-25℃の凍てつく寒さに身震いし、鼻の奥がツンと痛くなった。
しばらく夜の闇に目が慣れてくると、薄い緑色のカーテンが夜空をたゆたい始めた。
「オーロラ・・。」
私は思いついたように走って自分の部屋に戻ると、
一冊のノートとボールペンを取り出した。
さあ、どんな物語を書こう。
私は窓の外をもう一度眺めた後、期待に胸を膨らませながらノートにペンを走らせた。
完
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