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ザラゾーは、鼻で笑うと大きな大きな欠伸をした。
「どうでもいいけど、今俺は死ぬほど退屈なのさ。何か楽しいことしようぜ。」
「楽しいことね・・・。よし!決めたよ、ザラゾー。」
「ん・・!何だよ、何を決めたんだ?」
「島根に行こう!」
「しまね~??何でまた藪から棒に・・・。」
ザラゾーは、私の勢いにちょっと尻込みしている。
「2年前にLALAさんに手渡したバトンが、今どうなってるのか探す旅に出るのさ。楽しそうだろ?」
「それにしても、島根って東京から遠いだろ。どうやって行くのさ。」
私はまじまじとザラゾーを見ると、猫撫で声を出してみた。
「ザラゾーってさぁ、泳ぎが上手いよね。プロ並みだよねぇ~。」
「あ、ああ。そうともよ。俺は、泳ぎが得意中の得意さ。黒潮なんて物ともしねえさ。・・・て何だかお前の視線が気味悪いなぁ。」
「ねぇ、ザラゾー?。背中に載せて、私を島根に連れてって。」
「・・・さぁてと、今日の暇つぶしは終わりにしてそろそろ家に帰るかな・・・。」
私は、必死にザラゾーの後ろ足を掴《つか》んで引き留めた。
「なあ、ザラゾー。『旅は道連れ、世は情け』って言うじゃないか。」
「『旅は靴擦れ』とも言うぞ。また陸を歩いて行けよ、歩いて。」
「そう連れないこと言わずに頼むよ。九州周りで行くから、ザラゾーの好きな辛子明太子も食べれるしさ。」
「・・・。マジで・・・明太子。約束だぞ!絶対だぞ!嘘ついたらハリセンボン食わすぞ!!」
どうやらザラゾーもその気になってくれたみたいだな。本来の目的からはずれるけど・・・。
私は旅支度を済ませると、ザラゾーの背中に乗って多摩川を下り京浜港に出た。
後は日本列島を西回りに、いざ島根。
ザラゾーの大好物の明太子を何度もチラつかせながら、東京湾を出発したのだった。
「待ってろよ!ふくやの明太子ぉ~!」
2018.02.25
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