1人が本棚に入れています
本棚に追加
薫さんは寝室までエスコートしてくれた。家の周りを見合わすと、ところどころ傷んでいる。
家の壁には引っ掻き傷? のようなものもある。
「お兄ちゃん......なんかヤバい気を感じるよ」
「そうか、気をつけろよ」
俺は思わず悪寒に襲われた。全身から鳥肌が立ってきた。
俺は除霊の技術には長けているのだが、霊気を察知する力はあまりない。
せいぜい、ちょっと霊感が強い人間と同じくらいだろう。
霊気を察知する力は朱莉のほうが俺よりもはるかに長けている。
しかし、俺ですらヤバいと感じた。
「こちらです」
がちゃりと薫さんが扉を開けた次の瞬間、薫さんは倒れこんだ。
「薫さん!」
体を揺さぶるが、返事はない。
寝室の天井には、黒い物体が目に映った。
「なんだ、あれは......」
黒い物体はものすごいスピードで薫さんの体内に侵入していった。
「な......」
薫さんはパチリと目を冷まし、ガバッと起き上がった。
「か、薫さん、大丈夫ですか?」
「死ね」
薫さんが思いっきり俺を蹴り上げた。数メートルほど飛ばされた。朱莉も一緒に巻き添えを食らってしまった。
「いてて、お兄ちゃん、痛い」
「いてて......何するんだ!」
薫さんは、先ほどまでとは全く雰囲気が異なった。ニヤリと薄気味悪い笑顔を浮かべている。
最初のコメントを投稿しよう!