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いつもならどんな相手でも3発当てれば除霊できた。
全く聞いた素振りを見せないのは、あの悪霊が初めてである。
扉の前まで移動し、ドアノブを回したが、全く開かなかった。
「なんで? なんで開かないの?」
朱莉はパニック気味になっている。
「無駄だ。私の力によって、扉を開かないようにしてきた」
悪霊がゆっくりと近づいてきた。手には包丁を持っている。
薫さんの顔は生気を感じさせないくらい白い顔で、声は彼女の物とは思えないくらい、低くどもっていた。
「くそ! お前、生前に何があったんだ!」
「俺は以前、この屋敷で首吊り自殺をした。この女の身体はマッサージ機のように居心地がいい。お前たちは邪魔だから殺させてもらうぞ」
包丁を構えてゆっくりと近づいてきた。
ここは、切り札を切るしかない!
「許してください! どうか許してください!」
「お兄ちゃん......」
俺は最強の謝り作法、土下座をした。
朱莉は哀れんだような声をしている。
助かるためだぞ。仕方ないんだ。
社会に出れば、自分が悪くなくても頭を下げなければならないときがくる。
これで相手も許してくれるはず。
「許すかぁ!」
悪霊は包丁を振り下ろしてきた。
だがしかし、想定内。俺は後ろ方向にバク転し、避けた。
「何!」
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