一つの時代

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 その男は、音もなく病室に現れた。  まるで、部屋の片隅の暗がりから湧いて出たたように。  まるで、そのわだかまった暗闇がぐにゃりと形を得たように。 「こんばんは。突然ですが、あなたの死期をお伝えに参りました」  身構えるこちらを意に介さず、男はそんな突飛な発言をする。 「驚かないでください。私、いわゆる死神というやつなんですよ」  闇の質感と色合いをまとって、その男は微笑んだ。
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