森の美食家

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森の美食家

「今日は特別な日だ!」  目の前に置かれたご馳走をまじまじと眺めながら、男は恍惚とした表情を浮かべて言った。 その日は男にとっても、また、人類にとっても特別な日となった。 とある国の山深くに一人の男がいた。 その男は山奥の大きな湖のほとりに建てられた小屋に住み、猟をしながら暮らしていた。といっても猟師として生計を立てていたわけではなく、ただ食べるために猟をするという、原始時代に戻ったような自足自給の暮らしを送っていたのだった。猟に必要な弾や火薬、生活に必要な最低限の物資の購入、銃のメンテナンスの為に遠く離れた町まで出ることもあったが、一年の大半はこの小屋から離れることはなかった ある日の昼頃、男の元に若いスーツ姿の若い男がやって来た。 「どうもこんにちは。私XX製薬会社のものですが、今お時間を少々いただいてもよろしいでしょうか?」 「おや、お客とは珍しい。いいですとも。遠く不便なこんな場所へよくぞいらっしゃった。ささ、どうぞ中へ」     
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