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「T市で起きました殺人事件の続報です」
アナウンサーは、原稿を淡々と読み上げる。
「今日未明、T市で男女二人の刺殺体が発見されました。現場に残された遺留品から、被害者である男性の内縁の妻であり、自称エステティシャンの『カキザキ リョウコ』に逮捕状が出ました。なお、カキザキ容疑者は現在も逃走中で……」
「リョウコ!?」
画面いっぱいに映った犯人の顔写真に釘付けになる。
見慣れた、元妻の顔だった。
ドンドンドンドン!
突然、玄関ドアが激しくノックされる。
しまった、田舎で育った俺は就寝時以外にロックを掛ける習慣がないのだ。
胸騒ぎを感じた時には、すでに手遅れだった。
「マサシ!」
「リョウコ……!」
目の前に、背後のテレビ画面に映る指名手配犯と同じ顔をした元妻のリョウコが立っていた。
「彼氏と浮気相手を殺しちゃって、逃げてるの」
「知ってる」
「匿って!」
「無理だって!」
「今日は『特別な日』じゃない!!」
「そういう使い方する!?」
<END>
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