特別な日

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『リョウコさん』とは、半年前に別れたばかりの元妻の名前だ。 そんなことより、田舎で専業主婦としてひたすらサラリーマンの父を支えてきた今年で還暦になる母が冗談を言うとは、到底思えない。 「あ、ああ……『特別な日』だからね。ところで、母さんは何が欲しい?」 とりあえず、話を合わせて探りを入れる。 「クリスマスじゃあるまいし。物を贈り合う日じゃないけんね、『特別な日』は。あぁ!お隣りのハタナカさんが回覧板持ってきたわ。切るけんね」 プー、プー、プー…… 通話は、一方的に切られた。 大切な人に何かをプレゼントする日かと思ったが、そうでもないらしい。 物を贈り合うことが目的ではないとしたら、感謝の気持ちを伝えるとか? けれど、『特別な日』を設定してまでの行いでもないような……。 混乱していると、つけっぱなしにしていたテレビ画面が、ニュース速報に切り替わった。
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