飼い殺しな王子と魔女の花嫁

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 ティータイムが終わり、シャロンはアルジェの部屋に向かった。アルジェの部屋には入る許可はもらっている。物音も立てずに入ると、机の上に本が置かれていた。絵も置いてある。  シャロンは表情を明るくし、机に近寄った。 「まあ、これは!」  思わず声を上げる。  シャロンは自分の住む館にずっといる。  以前いた館では、魔女だということを少しでも知られたらいけないと監禁されていた。今は監禁されていないし、アルジェと一緒なら出かけられている。 しかしアルジェに自分のことで迷惑をかけたくなかった。シャロンは自発的に館に閉じこもっていた。 館にいるシャロンがつまらなさを感じないように、館前の治安的に危ない貧民街を通り抜けて、アルジェは本や絵を集めてくれた。  今日アルジェが用意してくれたのは、天使の絵だった。高貴な天使が赤子の救世主を祝福する絵だ。魔女ではあるが自覚も薄く、また力も解放しきっていないシャロンは天使の絵が大好きだった。むしろこんな綺麗な存在に憧れていた。 自身の背中には、ジェリダ家に恨みを持つ魔術師によって、刻印を刻み込まれている。魔術を使うための魔力を魔界から引き出すバイパスだ。シャロンの意思に関係なく彫られたモノに、コンプレックスを持たずにはいられなかった。 「本当に素敵な絵ね……素敵」  これを手に入れるためにどれだけの苦労をしたのだろう。民間の店に行くにも、後ろ指をさされるという始末なのは一度目撃している。しかしアルジェはシャロンのために、行動をやめない。  シャロンはローズマリーの言葉を思い出して、呟いた。 「ヴァレティン……」  愛しい人に感謝を伝える日。シャロンが知らなかった記念日。 もし自分が感謝を贈る人がいるとしたら、アルジェではないだろうか。  アルジェほど、自分を大切にしてくれる人はいない。シャロンは心の奥から衝動のような熱い感情がわき上がるのを感じた。そうだ、自分の夫にプレゼントを贈ろう。 シャロンは瞳を大きく輝かせて、立ち上がった。そして、その時になってから気がつく。 「プレゼントって、何を渡せば良いのかしら……」  シャロンは妹以外にプレゼント贈ったことがなかったのだ。
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