第9章

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「やっぱ、東京タワーっていいもんだな。久しぶりに来れて良かったよ。沢口、ありがと」  葉山の瞳は夜景が映り込んで輝いている。   「俺の方こそ、葉山、ありがとう」 「なんか、おまえのそういう顔、初めて見たみたいだな……」  葉山は、照れ隠しのように、目を細めて遠くの夜景に目を移した。    葉山って、そういう顔も見せるんだな。  美しい夜景に後押しされるように、気持ちが昂る。  なんだろう、この気持ち  今、すぐにでも、葉山を抱きしめたい——  そんな衝動にかられるほど、葉山の全てに魅了される。   「どこも、みんな綺麗だけれどさ……」  思わずつぶやいた。 「俺は、こっち側の夜景が好きだな」 「え、どこ?」 「ここが、一番好き」 「ここが?」 「おまえが住んでいる家があるから……」  と葉山が住んでいるアパートがある方向を指差した。 「え? 俺の?」 「そう。俺、おまえのことが好きだから……かな」    とても自然だった。  ずっと、言いたかったことが、素直に言えた。  葉山は驚いたような顔でこちらを見ている。 「沢口! そういう大事なこと、さらりと言うなよ」 「好きだよ。おまえが」 「ほんとに?」 「うん、もう、ずっとまえから俺もお前のことが好きだったんだってわかったんだ」 「ずっと前から……!?」 「うん。おまえのあのときのキスのおかげでわかったんだ」  今だからわかる。  俺は、本当は、ずっと前から、葉山のことが気になってたんだってこと。素直になれなかったのは自分だったのだ。だから、そんな自分に、葉山もつい憎まれ口を言ってしまってたんだってこと。    葉山と出会ってから1年以上も、ずっと心の奥に鍵をかけていたのは自分の方だったんだ。  でも、あの時、葉山がしてくれたキスが俺の気持ちを呼び起こしてくれた。   「あの時の?」 「うん」 「それなら、隠さず、俺だって、早く名乗っておけばよかったな」  香水のキャッチフレーズにつけた『男が惚れる男に』  あれは、そうなりたいという、無意識の中にある、自分の願望だったんだな。  屈託なく笑う笑顔、大人びているかと思えば、子供のように純粋で傷つきやすくて、でも、大きな優しさで自分を包んでくれる。    葉山、おまえの全てが好きだよ。 「葉山、俺とずっと付き合ってくれるか?」 「当たり前だろ! 今日、俺から言おうと思ってたのに、先に言われたな!」    こんなにステキな恋人がすぐ近くにいたんだな。 「葉山…… おまえの家に行きたい」 「うっ、今日のおまえ、大胆……いいのか……ほんとに……」 「うん」  今ここで、誰かに聞かれても恥ずかしくなんかない。  葉山が大好き、こんなにも——
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