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「溝口主任、おはようございます」
「ああ、おはよう」
「主任、プレゼン書完成しました!」
「そうか、それは良かった。じゃあ、さっそく今日のミーティングで検討しよう」
「はい! それから、昨日はコーヒーありがとうございました。そのおかげで頑張れました」
出勤してすぐに主任にプレゼン書が出来上がったことと、缶コーヒーのお礼を伝えよう。そう思っていた。
「え? コーヒー?」
「私の机の上に置いてくれてた……」
主任は意味がわからないって顔をしている。
「主任じゃないんですか?」
「え?」
「溝口主任、お電話が入っています」
「あ、横井さん、1番にお願いします」
主任に電話が入り、話はそこで途切れた。
主任と話が噛み合わず、俺は、狐につままれたような気分で、席に腰を下ろし、主任の電話が終えるのを待った。
「ごめん、沢口君、さっきの話、途中だったけど、コーヒーがなんだって?」
「いえ、勘違いでした……アハハ」
てっきり溝口主任が置いたものと思っていたが、主任が嘘をついている風でもない。
俺は、取り敢えず笑って誤魔化すしかなかった。
俺の勘違いなのか?
でも、あの時、1係で残っていたのは主任と俺だけだったはず……?
昨日、森山先輩が先に帰って、それから横井さんが帰って、そのあと白鳥先輩が先に帰った。
それまでは、机の上にコーヒーは置かれていなかった……。
いくらパソコンに集中していたとはいえ、置かれたら絶対に気づくはずだ。
いや、でも缶コーヒーは買ったばかりで温かった。だから、やっぱり、俺がトイレに離席している間に誰かが置いたのは間違いない。
でも、いったい誰が?
まるで犯人探しのように探偵気分で推理する。
あの時、1係の他に2係、3係にも数人残っていたのは間違いないが、俺に缶コーヒーを置くようなやつっていただろうか……?
「沢口君のプレゼン資料をみんなで検討するから午後1でミーティングルームに集まってください」
「はい」
「沢ちゃん、もうできたって! 仕事早いなあ」
「森山先輩、ありがとうございます」
「自分の箇所は今日で完成するからね」
「お願いします!」
結局、コーヒーの犯人探しは、うやむやになったまま。
忙しさの中に紛れて次第に忘れていった。
後になって点と点が繋がるのだが……
それはずっと後のことになる。
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