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プレゼンのスケジュールは、今日、明日と3件ずつ取引先を回る予定になっている。
まず、最初に向かうのは、大手の老舗デパート丸越屋。
我が社との取引の歴史は長く、関係は良好らしい。
しかし、だからと言って、商売に関してはシビアな大人な世界。安心は禁物で、新商品をどれくらい置いてくれるかは、今日のプレゼンにかかっている。
丸越屋本店の事務室に着いたら、まず、新商品のプレゼンを俺と森山先輩の2人で行い、白鳥先輩は資料配布や資料の説明を担当することになっている。
そして、最後に一係全員と取引先の担当者全員がテーブルに着いて、交渉という流れだ。
自分のありったけ、ベストを尽くしてやろう。
そう心に決め、先方に向かって、映像とともに、プレゼンを始める。
緊張したのは最初のほんの少しで、話進めているうちにいつの間にか夢中になっていた。
「以上となります。どうぞよろしくお願いいたします」
あっという間の時間だった。
自分なりに満足して一礼をする。
「この新商品、キャッチフレーズがいいですね」
「ありがとうございます」
「それに、俳優Aさんの起用もぴったりですね」
うまくいった!
先方から伝わってくる感触でわかる。
その後のバトンを渡した森山先輩もさすが慣れたもので、関西弁は全く出ない。普段はお茶目なだけで、やっぱり、やる時はやる先輩だと思う。白鳥先輩の資料説明も滞りなく進み、最後まで和やかな雰囲気で行われた。
「溝口さん、それでは、後日、お返事させていただきます」
「わかりました」
「弊社内部上の手続きがありますので、いますぐにご回答できないので申し訳ありません」
「ええ、もちろん承知しております」
「多分、御社の御意向に添えると思います」
「ありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします」
「沢口さん、今日は面白いプレゼンでしたよ」
「あ、ありがとうございます!」
「良いお話お待ちしております。本日は、貴重なお時間、ありがとうございました。私たちはこれで失礼いたします」
エレベーターホールに出るとすぐに、互いに顔を見合わせ、皆でガッツポーズ。
笑顔が綻んだ。
「沢口君、良い出来だったよ」
「ほんと、沢ちゃん、うん、良かった」
「沢口君、堂々としていたわよ」
「ありがとうございます!」
俺たちは、次の取引先に向けて、丸越屋のエレベーターに乗り込んだ。
その時、主任の携帯の着信音が鳴った。
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