第1章

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 我が社は、男性向けの香水ブランドを開発し、春の新商品として、華々しく売り出すキャンペーンを行う計画が進んでいた。    新商品のキャッチフレーズや取引先へのプレゼンは、従前なら、マーケティング課の3つの係が持ち回りで行っていたが、今回は初の試みで、キャッチフレーズは公募制を取った。  キャッチフレーズの選考に選ばれた暁には、その者が中心となり、在籍する係が商品のマーケティング戦略や取引先へのプレゼンを行うことになっている。     勉強になるからと主任の薦めもあり、応募してみたのだが、まさか自分の案が採用されるとは! 「沢口君、凄い! やったね! おめでとう」  向かいの席から男性社員の憧れの的、白鳥涼子(しらとりりょうこ)先輩の祝福を受ける。   「ありがとうございます!」  上ずりそうな声を抑えるのが精一杯だった。  今回、同じく応募した白鳥先輩に対して、後輩の自分がそれを押し退けて採用されたことを少し心苦しく感じたが、その屈託のない笑顔に救われた思いがした。  
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