第5章

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 一目散に事務室を出て、休憩室に入る。    よかった……誰もいない。    ほっとして、自販機からいつもの缶コーヒーをゴロンと出した。  いつもの落ち着く椅子に腰掛け、柔らかな陽の光に当たる。  白鳥先輩の、あの笑顔。  俺に向けられた視線…… 白鳥先輩は俺のことが…… 好きなのだろうか。  それでキスを……    いや、いや、それは俺に都合よく考えすぎだろ。    ホットコーヒーが顔の火照りを助長するようだった。  こんなんじゃ仕事に集中できない。  違うことを考えよう。  無理やり思考を変え、携帯の待ち受け画面の日付が目に入った。    今年も残り20日かあ……    今年は自分にとってとても飛躍的な年だった。  最後の最後で、ハプニングがあったが、トータル的には良い年だった。  ひとまず、あのことは保留しよ。  よしっ、残りわずかだ、頑張ろう!  缶コーヒーを思いっきり飲み干した。  空き缶をゴミ箱に捨て、事務室に戻ろうとしたその時だった。  会いたくないやつの姿が視界に入った。  葉山だ。  心がざわつく。せっかく心が落ち着いたところだったのに、タイミングが悪い。    また何か嫌味の一つ、二つ言われる……  よりによって、こいつに、2次会後の自分の醜態を見られてしまったのだから。   「よっ、お疲れ」 「お疲れ……」  下向きすれ違いながら、できるだけ、話しかけられないオーラを体に張り巡らせる。今までその効果があったかは知らないが、やらないよりはマシだと思っている。 「沢口、お互い、優良社員に選ばれて良かったな」 「え? あ、うん」  葉山は笑顔を残し、自販機から飲み物を出し奥の席へと向かった。    え? それだけ?  えー?  なんだよ、なんだよ。  調子狂う!    いつもと違う葉山に、逆に、何か企んでいるのではないかと思いたくなるほど居心地が悪く感じた。    
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