第5章

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 シャワーの出力を上げ、頭から体全身、思いっきり洗い流す。  熱く湯気がもや立つ中、浴室の曇る鏡を手の平で磨き、自分を写した。  あの夜のことは夢だった。  そう夢だったんだ。  真実をこれ以上詮索するのは止めよう。  そう強く思った。  というよりそう自分に言い聞かせたという方が正確かもしれない。  なぜなら、相手が誰であれ、たとえわかったとしても男である以上何も始まらないし、ただ不毛なだけだからだ。  仕事に集中!  今はそれが一番。  湯船に浸かり、気合を入れるように平手で両頬を叩く。    ——そして、いつか忘れてしまうだろう。  明日から、もっと、もっと、仕事にがんばろう。    湯船から勢いよく立ち上がった後に、雫が溺れ落ちた。
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