259人が本棚に入れています
本棚に追加
/70ページ
シャワーの出力を上げ、頭から体全身、思いっきり洗い流す。
熱く湯気がもや立つ中、浴室の曇る鏡を手の平で磨き、自分を写した。
あの夜のことは夢だった。
そう夢だったんだ。
真実をこれ以上詮索するのは止めよう。
そう強く思った。
というよりそう自分に言い聞かせたという方が正確かもしれない。
なぜなら、相手が誰であれ、たとえわかったとしても男である以上何も始まらないし、ただ不毛なだけだからだ。
仕事に集中!
今はそれが一番。
湯船に浸かり、気合を入れるように平手で両頬を叩く。
——そして、いつか忘れてしまうだろう。
明日から、もっと、もっと、仕事にがんばろう。
湯船から勢いよく立ち上がった後に、雫が溺れ落ちた。
最初のコメントを投稿しよう!