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「沢ちゃん、大丈夫?」
「え? 何がですか?」
パソコンに集中していると、横から森山先輩の声。
「最近、あまり、休暇もとらんし、仕事ばっかりやないかあ。ね、主任」
「私も休めって言ってるんだけど、沢口君、仕事の鬼になってるんだよねえ。ベスト社員賞を取ったからって、そんなにコンつめなくてもいいんだよ」
「いえ、そんなんじゃないです。俺、仕事が好きなんです」
「沢ちゃん、仕事が好きって、若いもんが、そんなの、生きてる意味ないって。若い頃はもっと遊ばにゃ」
「そう……ですか?」
「そうよ、沢口君」と横井さんも一緒になって俺を心配している様子だった。
「もうすぐクリスマスだよー。沢口君予定ないのー?」と白鳥先輩が嬉しそうに卓上カレンダーを持ち上げて見せた。
クリスマス……
街はすでに、クリスマス一色。
あちこち飾られた煌びやかな光。どこからともなく聞こえる音楽。
この時期は、童心に返ったように、誰の心も浮立たせてしまう力があるのではないかと思う。
特に地方から出てきた自分にとって、都会のクリスマスは派手で見ているだけで心が華やぐ。
家族、恋人、友人。
それぞれが大切な人と過ごす幸せなイベント……
それは、ずっと、今も昔も変わらない。
「まだ決まってないんですけど……多分、いつものメンツで飲みに行くと思います」毎年同じメンツで集まる彼女のいない男同士の集まり。
今年のクリスマスも多分そうなるだろう。
「沢口君、かっこいいから彼女いるんじゃないの?」」
「いえ…… 残念ながら、アハハ……」
いつかそうなりたいと思いながら、白鳥先輩のお世辞に苦笑しながら答えた。
「ね、沢口君、良かったら、たこやきパーティーに参加しない?」
「ええっ!」
突然の横井さんからの申し出に、一同驚いた。
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