第6章

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 後ろを振り向くと、葉山が立ってこちらを見ていた。口元に浮かぶ微かな笑みを俺は捉えた。  もう、逃げられない!  初めて挑戦するバンジージャンプの飛び込み台に立った気分ってこんな感じなのだろうか。  あとは、目を瞑って飛び込むしかない。 「沢口君、こちらからも先方さんに連絡しておくから、よろしく頼むよ」 「はい」 「それから、担当の方には、今後ともよろしくと言いながらこの来年のカレンダーを渡してくれ」 「わかりました」 「じゃあ、沢ちゃん、この書類、ヨロシク!」  ほんと、調子いいんだから……。  先ほどまで申し訳なさそうにしていた人とは思えないほど、元気そうな森山先輩から書類の入った茶封筒を受け取った。 「葉山君、よろしく頼みます」と主任の言葉で気がつくと、葉山が俺の背後に立っていた。 「ハヤちゃん、よろしく!」 「わかりました」    いつの間に……  俺は慌てて席を立った。 「沢口、駐車場に一緒に行こう」  葉山は、黒の革ジャンに黒の革手袋で準備万端という様相だ。 「お、おう、わかった」  俺は急いでコートを羽織り、葉山の後を追った。  
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