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後ろを振り向くと、葉山が立ってこちらを見ていた。口元に浮かぶ微かな笑みを俺は捉えた。
もう、逃げられない!
初めて挑戦するバンジージャンプの飛び込み台に立った気分ってこんな感じなのだろうか。
あとは、目を瞑って飛び込むしかない。
「沢口君、こちらからも先方さんに連絡しておくから、よろしく頼むよ」
「はい」
「それから、担当の方には、今後ともよろしくと言いながらこの来年のカレンダーを渡してくれ」
「わかりました」
「じゃあ、沢ちゃん、この書類、ヨロシク!」
ほんと、調子いいんだから……。
先ほどまで申し訳なさそうにしていた人とは思えないほど、元気そうな森山先輩から書類の入った茶封筒を受け取った。
「葉山君、よろしく頼みます」と主任の言葉で気がつくと、葉山が俺の背後に立っていた。
「ハヤちゃん、よろしく!」
「わかりました」
いつの間に……
俺は慌てて席を立った。
「沢口、駐車場に一緒に行こう」
葉山は、黒の革ジャンに黒の革手袋で準備万端という様相だ。
「お、おう、わかった」
俺は急いでコートを羽織り、葉山の後を追った。
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