第6章

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 会社を出るとすぐに、横井さんが、葉山から聞いていたとおりの光景を目にした。  この時間、主要道路は車の列で埋め尽くされていた。  師走の(せわ)しさが更に拍車をかけ、渋滞を招いている。    タクシーだったら絶対に渋滞にハマっていただろう。  バイクで出たのは正解だった。    葉山の運転は手慣れたもので、車の波を上手くかわしながらバイクを走らせる。    マフラーで深々と覆っていた頬に冬の風は冷たかった。が、気持ちは爽快だった。  まるで時間が止まった世界で自分達だけが動く自由を与えられている感じに思えた。  バイクのハンドルを自由自在に操る葉山は、別人のようだ。  それに、その筋肉質な体が、腹に回して組んだ手や腕に革ジャンの上からでも伝わって来る。    普段ワイシャツ姿から想像できない。    こんなに筋肉質だったんだ……  鍛えているのかな?    今まで知らなかった、知ろうともしなかった葉山のことが自然と一気に流れ込んで来るようだった。  一瞬、急にカーブを切り、車体が斜めになった。 「あっ」  思わず葉山をキツく抱き締めた。 「ゴメン」 「は、何か言った?」葉山がヘルメット越しに聞いた。 「いや、何も」    葉山の首筋からまたほのかに香る香水が鼻を掠める。  爽快なエンジン音と共に、冬の風に気持ちが舞っていくようだった。
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