第6章

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 予定より早く芸能プロダクションの会社に到着した。  主任から事前に事情が話されていたおかげで、すんなりと案内を受けた。 「沢口さん、いつもお世話になっています。本日はこちらまでわざわざありがとうございます」 「いえ、こちらの手違いで、お届けが遅れるところでした」  と森山先輩の書類を担当者に無事届けた。 「逆に郵便より早く受け取れましたよ」 「そうですか、それは良かった」  その後、日頃お世話になっているメンバーに顔を合わせ、今後のスケジュールを軽く確認し、自分の役割も果たした。 「沢口さん、せっかくいらしたのですからコーヒーご一緒しませんか」と1階にある常設カフェに誘われた。  いつかは行ってみたいとは思っていた憧れのおしゃれなカフェ。 「ありがとうございます。とても残念ですが、人を待たせてあるので今日はこれで失礼します」と後ろ髪を引かれつつ、丁重にお断りした。    応接室から急いで出ると、ダッシュでエレベーター乗り込んだ。  到着してからもうすでに20分が経過している。    寒空の下で葉山が待っていると思うと気が気じゃなかった。  寒いから1階のカフェで待ってろと言ったのに、葉山はバイクの傍でいいと言って聞かなかったからだ。    頑固なヤツ……    寒っ!  1階ロビーから出て外気に触れた途端、身震いした。  暖かな部屋に慣れきった体は、急に寒さが身に染みてくる。  こんな中、ずっと葉山が自分を待っていたかと思うと、気持ちが急ぐ。
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