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第7章
いよいよ、たこ焼きパーティー当日となった。
葉山と一緒に書類を届けた日以来、仕事が立て込み、1週間があっという間に過ぎて行ったという感じだった。
一体誰が来るのだろう。
膨れ上がった人数は20人。たこ焼き居酒屋を貸し切って午後7時スタートということだけは聞いている。
横井さん曰く、お楽しみの方がいいでしょということで、メンバーは明かされていない。
「いいなあ、沢ちゃん、今日たこ焼きパーティーやろ」
「ええ、まあ」
「家族でクリスマスパーティーやなかったら、俺も行くんやけどな……」
「ダメですよ。独身者だけの集まりなんですからねっ!既婚者はダメです」
「独身が羨ましいなあもう」
「すでに素敵な人を見つけて結婚されたんですから、こっちからしたら既婚者である森山先輩の方が羨ましいんですよ」
「いやいや、結婚なんて墓場やでー。やっぱり自由が一番やて……」
「もう、夢を壊さないでくださいよ-」
「森山さん、かわいいお子さんが待ってるわよー」
「はい、はい。白鳥さんには、かなわんなあ」
クリスマスは、独身者であれ既婚者であれ、大人になっても子供の頃に感じたワクワクした気持ちを思い起こさせてくれる特別な日だと思う。
社内の雰囲気は、今朝からいつもよりも明るくて、浮き立った気分が溢れていた。
葉山は行くんだろうか……
ふとそう思った。
後ろを振り返ると、離席中だった。
「沢口君、明日、葉山君も来るわよ……」
「えっ!? 横井さん、なんですか急に」
横井さんに心を読まれていたようで驚いた。
「気になってるのかなあと思って」
「全然、気にしてないです」
と慌ててパソコンに目をやる。
葉山が来ると聞いて、変に心持ちが落ち着く気分になった。以前の自分だったらあれほど嫌な気持ちになっていたのに。
人間の心って不思議だ。
食わず嫌いだった食べ物が案外美味しいと思ったり、毛嫌いしていたことが案外楽しいと気づいたり、少しずつ角が取れていくような感覚に似ている。
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