259人が本棚に入れています
本棚に追加
/70ページ
仕事を急いで片付け、時計を見た。普段なら終業時間ギリギリのペースが、今日は余裕で終えることができた。
これもクリスマス効果か……
ゆっくり歩いて、居酒屋に行こう。本屋に立ち寄る時間もあるくらい余裕だ。
軽く周りを整理して片付けながら、午後5時の終業のベルが鳴るのを聴いた。
さりげなく後ろを振り返ると、葉山はやっぱり離席中だった。
机の上は綺麗に片付いている。
外回りかな……?
出社はしていたようだったが、ずっと、姿を見ていない気がする。
たこ焼きパーティーには来るよな……
横井さんが言っていたことだし、必ず来るだろう。
「お先に失礼します」
「沢ちゃん、俺の分まで楽しんで来てや」
「横井さん、7時に居酒屋で」
「ええ、居酒屋でね。私はもう少し仕事かたしてからいくわ」
葉山は来るのか——
ただそれだけのことなのに、どうして気軽に聞けないのだろう。
自分は何を恐れているのか。
言葉を飲み込んだまま、横井さんに軽く挨拶をして事務室を出た。
最初のコメントを投稿しよう!