第7章

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 仕事を急いで片付け、時計を見た。普段なら終業時間ギリギリのペースが、今日は余裕で終えることができた。   これもクリスマス効果か……  ゆっくり歩いて、居酒屋に行こう。本屋に立ち寄る時間もあるくらい余裕だ。    軽く周りを整理して片付けながら、午後5時の終業のベルが鳴るのを聴いた。  さりげなく後ろを振り返ると、葉山はやっぱり離席中だった。  机の上は綺麗に片付いている。  外回りかな……?  出社はしていたようだったが、ずっと、姿を見ていない気がする。  たこ焼きパーティーには来るよな……  横井さんが言っていたことだし、必ず来るだろう。   「お先に失礼します」 「沢ちゃん、俺の分まで楽しんで来てや」 「横井さん、7時に居酒屋で」 「ええ、居酒屋でね。私はもう少し仕事かたしてからいくわ」  葉山は来るのか——  ただそれだけのことなのに、どうして気軽に聞けないのだろう。  自分は何を恐れているのか。    言葉を飲み込んだまま、横井さんに軽く挨拶をして事務室を出た。  
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