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横井さんの言葉がずっと頭から離れなかった。
話が上の空になって、心は宙を舞う。
「ねえ、沢口君? 聞いてる?」
「えっ、あ、ごめん、何だったけ?」
「もう、話、聞いてないんだから……」
「ごめん、ごめん」
つい、葉山を目で追っている自分。
葉山の言動を見つめている自分。
今日の仕事大変だったな……って労をねぎらってやろうか……
いや、いきなり言ったら変だろ……
いつもなら、向こうから話しかけてくれるのに。
話しかけられたら、うざいと思って自分から避けていたのに。
まだ、一度も話していない葉山のところへ自分から行って、声をかけようかと躊躇していた。
考えれば考えるほど、心臓は高鳴り、怖気付いて、普通に話しかけられない。
横井さんが変なことを言うからだ。
不自然に葉山のことを意識している自分がいた。
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