第7章

9/9

259人が本棚に入れています
本棚に追加
/70ページ
 思考は、ひらめき。一瞬の電光石火  頭の中で、電流が走った。  神経回路が急速に回る。  うそだろっ!  体が硬直し、額に汗が滲む。 『前みたいに、俺が部屋に運ぶことになっても知らねーぞ』 その葉山の言葉、態度が引き金となった。  なんっ!  バラバラになっていた記憶のピースがはまる瞬間というものはこういうことをいうのだろうか。    あの時の出来事全てが今繋がった。  いままでうっすらとかかっていたモヤがすっきりと晴れ渡ったが、同時に居たたまれない気持ちになる。  どうしよう……  どうしたら!    ここを離れなくては——  逃げよう!  葉山がトイレから戻って来る前に、とにかく、ここを出よう。  ある意味、それは本能だった。  葉山にどういう態度をとっていいのかわからない。  危険なことから、未知なものから、逃げたいという人間の本能。 「す、すみません、俺、ちょっと、先に帰ります……」 「え、どうしたの?」 「ちょっと、悪い酔いしたみたいで……」    葉山が戻るまでに、早く! 「沢口君、大丈夫? 送って行こうか?」 「いえ、大丈夫です。一人で帰れるんで…… あの飲み代は……」 「大丈夫、立て替えておくね」 「すみません、お願いします」    葉山はまだ戻って来てない。  今のうちに早く! 「じゃあ、気をつけてね……」 「はい……」    俺は、何かから逃げるように、後ろを振り返らずに急いでBARを出た。
/70ページ

最初のコメントを投稿しよう!

259人が本棚に入れています
本棚に追加